自分の気持ちがわからなくなった男の子の話
あるところにひとりの男の子がいました。
その男の子は屁理屈が大好きで、いつも人をからかって遊んでいました。
思ってもいないことを言い、他人の顔色を窺い、他人に好かれることが大好きでした。
ある日、男の子はふと思いました。
「僕の気持ちはどこにあるんだろう?」
男の子は「こんなことを言ったら、相手はどんな風に思うだろう」ということばかり考えていて、自分の気持ちをほったらかしにしていました。
そして、自分の気持ちがわからないことに気づきました。
男の子は落ち込みます。
「人のことばかり考えていたら、自分のことがわからなくなってしまった」と。
日に日に、男の子は自分の気持ちがわからなくなります。
そして、段々と元気がなくなり、いつも人をからかっていた男の子が自分の殻に閉じこもってしまいました。
ある時、女の子が話かけてきました。
「どうしたの?元気ないね。」
「僕は、わからないんだ。自分の気持ちが。」
「どうして?」
「わからないんだ。」
「じゃあ一緒に考えてみようか。」
「え?なんで?いいの?」
「うん。君は大事な友達だから。」
女の子と言葉を交わすうちに、今まで人のことばかり考えていた男の子が女の子の力を借りて、自分と向き合うことができるようになりました。
そして男の子に初めて心の底から友達と呼べる友達ができました。
「ありがとう。君のおかげで、少しは自分のことがわかった気がするよ。」
「私は、君と話をしていただけだよ。君が自分の気持ちがわからないのは、自分と向き合ってこなかったから。私はそのお手伝いをしただけだよ。」
と、女の子はあっけらかんと言います。
「君はすごいね。とても頭が良くて、優しい。」
「そんなことないよ。君は自分のことより、人のことをよく考えているの。その方がずっと優しいよ。」
「そう言ってもらえると嬉しいな。これからも話をしよう。僕と友達になってほしいな。」
「私たちはもう友達だよ。私は君が苦しい時、必ず傍にいる。だから心配せずに生きていってね。」
「ありがとう。必ずだよ!」
そして女の子は、その場を去ります。
「君は大丈夫。がんばってね。」
その後、男の子はとても元気になりました。
人に好かれる為に、嘘をつき、自分を殺して。
時には、自分と向き合い、自分のことを好きになれるよう努力をしました。
そうして、男の子は一人の人間として生きていくことができるようになりました。
「また、あの女の子に会えるといいな。」
そんな気持ちを胸に、今日も男の子は生きていきます。
大切な友達とまた会えることを願って。